28Nov
日本三大上布と言われる『宮古上布』。東京・練馬にある白瀧呉服店で『宮古上布展』が開催されています。明日11月29日(日)まで。時間は10時から19時。※28・29日は11時から17時までは織子さんもいらっしゃるそうです。
衣食住の『衣』。どうして食ではなく住でもなく、『衣』が真っ先に来るのか?
それは、『衣』が魂と身体を守るものだから、と習いごとの先生のお話で聞いたことがありました。その習い事は、日本の家庭内文化、年中行事であったり、五節句であったり、室礼であったり、毎回心が静かになれる時間でした。そこで、日本のことに触れるようになり、より深い日本への敬い?そういった気持ちが湧きました。日本に限らず、その土地、その場所の文化や慣習、伝承、縛られるのは堅苦しいと感じることもあるけれど、先人の繋いでくれたものを受け取って次に繋げていくのも良いんじゃないかと思えるようになりました。そして、大切にしたいとも思うようになりました。
さて、そして『宮古』は、でも、元々は『日本』ではないのですが…。
『沖縄本島』の方ともまた違う文化なのだそうです。
つい、日本、沖縄、など一括りにしてしまいそうになるけど、例え小さくても『違う』ところも大切にしたいし無くさないようにしたいと思うこの頃です。
【宮古上布】
宮古上布の歴史は450年ほど前に遡り、「越後上布」「近江上布」と並んで日本の三大上布といわれれているそうです。
材料が育つのも、糸をつくっていく作業も、染める作業も、今回、お話を聞き、とても貴重で、手間と時間がどれだけ重ねられてこの一反の織が出来上がるのかを知りました。
実際に、糸になる前の苧麻や、依っていくところも見せていただきました。その糸の細さよ!
この前録画していたNHKのSWITCHインタビュー達人達(たち)の中の会話を思い出しました。テキスタイルデザイナー六本木『NUNO』を営む須藤玲子さんが、対談のお相手の野口五郎さんから「あえてお伺いしたいけど、世の中って どんどんデジタルが、テクノロジーが先に行く、そんな中でファストファッション、今のファッションっていうのをどういうふうに思われます?」という質問に対し、
「ファストファッションが悪だとは思っていないし、認めていますが、ただ、感じるのは ファストファションって ちょっとね 買いだすと いろんな人見てると中毒になるんですよ。いずれ依存症になっちゃうみたいな感じしませんか?とんでもなくクローゼットの中にたまっていくんですよ。何か そんな気が すごくするんですね。」
NHK SWITCHインタビュー達人達(たち)
そして、染め物もデジタルになってきて、あらゆるものに染められるようになったそうです。例えば何千色だって平気でできると。主流はやはりデジタルだそうです。
そんなデジタルな、そしてスピード・効率優先の世の中でも、今回目の前で見た『宮古上布』は、息を飲みそうなくらい、そして、ため息が出るくらい、繊細で、でも真っ直ぐ張りがあって、強さが伝わってきて、透け具合がとても美しくて、宮古の気候が目で感じられました。その土地で、この着物を纏えばこそ、風が抜けて行く涼しさとか肌が感じる感覚とか。
染料で染めたものと、藍で染めたものはやっぱり比べてみたら違いが伝わってくるし、材料も使われた糸も手で依ったものとは質感が、風合いが違ったのに心が動かされました。
着物の文様もとても好きでしたが、よくよく考えてみると材料を栽培するところから含まれるのだなと改めて思いました。
宮古織物事業協同組合のパンフレットによると、江戸時代には「人頭税」が施行され、上布も上納布としてその美しさゆえ、量を求められ、島の女性たちは寝る間も惜しんで織らなければならず、とても苦しい思いをしたという歴史もあるそうです。
女性が織物を織る、とても美しい姿であり女性らしい仕事だと思いますが、その歴史を知り、とても苦しく悲しい思いも湧いてきます。
またここでNHKのSWITCHインタビュー達人達(たち)「平和構築学教授 伊勢崎賢治さん✖️ダンサー 菅原小春さん」(2017年12月9日に放送されたもの)の回の会話を思い出しました。
菅原小春さんがイスラムの女性と家族のように接する機会があり、初対面で「お茶を出してもらう」ではなく「雑巾と霧吹きみたいなのを渡され、最初に掃除を覚えろと言われ、それが最初は嫌われているのかと思ったけど、カルチャーが違うわけだからとりあえずやってみて、だんだん一緒に過ごすうちに、そこのウェルカムでありカルチャーなんだ」と、体験と肌で感じられたお話しでした。また、女性が肌を隠すことも美しいと感じるようになったと。「私もこういう女性がいいな」と思ったそうです。「そういった女性のしんの強さの女性っていうのはここのカルチャーにいても分からなかったから出会ってよかったな」とおっしゃっていました。それに対し伊勢崎さんは「僕は職業柄女性の人権とか そういう世界にいるじゃないですか。そういうことはちゃんとしなきゃいけない。そういうことしないところには女性の人権を根付かせるようなずっとやってきたんです、今までね。僕がいた世界ではなぜ女性がそんなことをやらなければならないのかってなってくる世界」と笑っていらっしゃいました。
宮古上布は美しさだけではなく、強さも感じたのはそういった歴史を乗り越えてきたこともあるからなのでしょうか。
【工芸品の販売も】
工芸品も販売されていました。印鑑ケース、札入れ、名刺入れ、ポーチ、文庫本サイズのブックカバー、コースターなど。コースターは手積みの糸を使って、特徴的な宮古上布の十字の文様は糸を染める時から緻密に計算されて織り上がっていったもの。技術の高さを求められるそうです。
そして、ハーブティーは宮古上布の材料である苧麻の葉もお茶になることが分かり、その宣伝も兼ねてブレンドハーブティーを開発したそうです。(↓写真左側1袋450円)。展示室で入れていただきました。ハーブティーは飲みにくいこともありますが、こちらは優しいふんわりした香りと味わいで飲みやすかったです。(モリンガ、月桃、長命草、苧麻、レモングラス)。
【白瀧呉服店について】
白瀧呉服店は嘉永六年の創業で東京で一番大きい呉服店だそうです。NIKKEI STYLEによると、多くのプロの棋士さんがこちらの白瀧呉服店さんが誂えた羽織・袴を愛好しているそうです。
【アクセス】
東京メトロ有楽町線・赤塚駅4番出口から出て右に進むと白滝呉服店の横に出ます。
東武東上線・下赤塚駅南口からは徒歩3分。南口を出て左に進み、突き当たりを右に進みます(右手の角に和菓子屋さんがあります)。左の角に『華屋与兵衛』、その先に川越街道が見え、その信号を渡り、その先の道をちょっと入ったところにあります。
中庭も美しい。